大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(ラ)160号 決定

一、よつて判断するに、仮差押命令の執行は強制執行に関する規定を準用する結果、動産に対する仮差押命令の執行もまた差押と同一原則に従つてなされるものであつて、民事訴訟法第七五〇条第四項後段のいわゆる換価命令は強制執行の方法に準ずべく、しかも右換価命令は口頭弁論を経ないですることができるのであり、しかも相手方を審尋していないような場合には換価命令に不服のある当事者は、まず同法第五四四条第一項により異議の申立をなし、これによつて執行裁判所に不服の点を更正する機会を得しめた後、その裁判に対して更に不服があれば同法第五五八条によつて即時抗告をすることができるのであつて、異議の申立をしないで直ちに換価命令に対して抗告をすることは許されないものであると解するのを相当とする。本件抗告は原裁判所が執行裁判所として口頭弁論を経ず、且つ抗告人を審尋することもなくなした仮差押執行の目的物に対する換価命令に対し、異議の申立を経ないでなされたものであることは記録上明らかであるから、上記の理由により不適法であつて却下を免れない。

二、ところで、金銭以外の仮差押物はこれを換価しないのが原則であつて、仮差押物に著しい価額の減少を生ずる恐れがあるとき又はその貯蔵について不相応の費用を生ずべきときに限り、申立により換価命令が発せられるのである。債権者の本件換価命令申立の理由は前記のとおり本件仮差押物は保管場所が適当でないため無価値となるというに帰するが、元来執行吏は善良な管理者の注意義務を以て仮差押物の保管をすべきもので殊に本件のように仮差押物は巻取紙でそれ自体腐敗等により著しい価額の減少を生ずるものでないから、保管場所が不適当ならば、他の適当な場所において保管すればよいわけで、執行吏自らが選んだ保管場所が雨漏りその他の理由で不適当であるからといつて、単にそれだけのことで仮差押物が無価値になるとして換価が許されるものではない。もつとも、他に適当な仮差押物の保管場所がないとか、又はあつても保管替に不相応の費用を要する等特別の事情が存在するときは、換価を相当と認めなければならない場合もあるであろう。原審は本件換価命令を発するに当り上記の諸点を考慮した形跡は記録上どこにも見当らない。本件抗告は不適法として却下を免れないが、抗告人から改めて原審に異議の申立がなされた場合には右の諸点を調査して決定すべきものであることを附言する。

(村松 伊藤 小河)

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